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塩のエッセイ

どちらも正しい塩論議

「塩の世界史 マーク・カーランスキー著」より引用

流行に敏感な人々は、今や二つの陣営に分かれている。一つは、健康にあることに情熱を燃やし、塩の摂取を控えるタイプ、もうひとつは、塩に熱中するタイプだ。古代から、塩が体に良いと考える人間と、体に悪いと考える人間のあいだで論争が戦わされてきた。両者とも正しいのだろう。

体が塩を必要とすることには議論の余地がない。多くの研究から、高血圧や心臓血管の異常と大量の塩分摂取の相関関係は示唆されている。紀元1世紀ないし2世紀ごろ編纂された中国の医学書「皇帝内経」は、塩は高血圧をもたらす可能性があり、さらには心臓発作を引き起こしかねないと忠告している。

逆に、塩の欠乏は低血圧の原因とされる。だが、大量の塩分摂取と高血圧の関係を否定するような研究結果もある。なかには減塩の食事は不健康であると指摘する研究者もいる。

腎臓がナトリウムを過剰に貯蔵することになるし、理論上は、健康な腎臓の持ち主なら過剰な塩分を摂取しても害を受ける事はない。発汗と利尿により、人体は過剰な塩分を排出するようにできている。問題はナトリウムとカリウムのバランスである。バランス機能が欠けている場合、カリウムが豊富な野菜の摂取を調節したくらいでは、ナトリウムの豊富な塩との問題は解決されないのだ。(続く)

欧米では、ベストセラーとなったこの「塩の世界史」の著者・マーク・カーランスキー氏は世界のありとあらゆる塩の歴史由来、製法を調査した塩のオーソリティーですが、彼の塩に対する観察と批評は俯瞰的です。

塩おやじは二つの陣営中、間違いなく「塩に熱中する」派に属しているわけですが、この著書には、「塩に熱中する派」が陥りやすい失敗についてもいろいろと書かれていて面白いのです。例えば、昔は見向きもされなかった不衛生で不純物の多い塩が高値で取引される現代のグルメについては、皮肉をこめて書いています。

著作の最後は、『地球上で最も入手しやすい物質「塩」の真価を定めるのが容易であったことは、いまだかつて一度もないのである。』という言葉で閉められており、その時代の経済状態、ライフスタイル、民の健康度によって、塩のトレンドが変遷してきたことがわかります。

カリウム・ナトリウムポンプ

マーク・カーランスキー氏が指摘した「カリウムとナトリウムのバランス」については、私たちの体内で細胞たちが人知れず働いてくれているという事実があります。

それが「カリウム・ナトリウムポンプ」という機能ですが、細胞内と外では、存在するカリウムイオンとナトリウムイオンの数が違います。つまり互いの濃度が異なります。

ナトリウム濃度は細胞外のほうが高いので、ナトリウムは細胞内に入り込みます。このままにしておくと細胞内外の電位差がなくなり、心臓や神経が動かなくなる、つまり死んでしまうので、細胞はこの逆の動き、入ってきたナトリウムを外にくみ出す作業をしています。この濃度差に逆らってミネラルを輸送するためにATPエネルギーが使われており、これを「能動輸送」と呼びます。

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このカリウム・ナトリウムポンプをスムーズに、あまり忙しくもなく、かといって休ませることなく稼働させる必要があるということでしょう。それを考えると、過剰な大量摂取も極端な減塩も、ポンプを動かす小人たちにとっては悩みの種でしょう。

落としどころはやはり、「今日も適塩(てきえん)・よい塩梅」ということでしょうか。

お後がよろしいようで。

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