岩塩は日本人に合わないのか?に、塩Gが答える

岩塩は日本人に合わないのか?に、塩Gが答える

岩塩が日本で採れない理由について・・

岩塩(がんえん)は日本では採れないお塩です。岩塩はもともと浅瀬の海や、塩の湖だったところが地殻変動によって地下にもぐり、土中に形成されたものです。

アジア、ヨーロッパ、中南米、アフリカ大陸には大きな岩塩鉱床が存在していますが、大陸のプレートは大きく、プレート間にいくつもの浅瀬の海や塩湖があり、比較的浅い土中に岩塩層が形成されたために、人がそれを塩として使ってきた歴史があります。

日本列島にもプレートは存在しますが、その境界の大部分は海の底にあり、陸地を横断している境界線(ユーラシアプレートと北米プレートと間にあるフォッサマグナ)は狭く、急峻であるために、日本では岩塩層は発見されていません。

しかし、完全に日本列島の地下には岩塩がないかというと、そうとも言い切れないのです。

日本のプレート出展:国土地理院資料


日本でも山から採れる塩はある

日本でも岩塩を採掘しようと、岩塩層を探した人物がいます。旧阿波徳島藩士で福沢諭吉に師事した黒部銃次郎です。彼は洋書で欧州では山から塩が産出することを知り、信州の鹿塩(現:長野県大鹿村)に岩塩を探しに来ました。

彼らは「白い鉱山師(しろいやまし)」と呼ばれ、一攫千金を夢見ましたが、結局、岩塩層を発見することはできませんでした。彼らが岩塩層があるのではないかと考えた長野県大鹿村の地中からは現在も濃い塩水が湧き出しており、この塩水を煮詰めて塩を作っています。

大鹿村には地質境界である中央構造線があり、フォッサマグナとも近接しているので、この地下に岩塩鉱床に似たものが存在するかもしれないとも考えられます。

私も現地を訪れて湧き出す塩水とその塩水で作った山塩を味わった事があります。

マグネシウム量が少ないためにスッキリとした味のお塩で、海塩よりも岩塩に近いものを感じました。

大鹿村 山塩館
大鹿村 山塩館での塩つくりの様子

 

岩塩での日本の歴史は浅い

日本人に「岩塩」の存在が広く知れわたるようになったのは、1997年の塩の販売自由化以降なので、その歴史は浅く、岩塩について日本人がよく理解をしているかというと、そうではないと感じています。

海外から輸入され、高級レストランやステーキハウスで使われる事も多いので、ついつい「岩塩=高級な塩」というイメージをもってしまうかと思いますが、岩塩にもピンからキリまでがあり、「岩塩」というひとつの商品があるわけではないのです。

岩塩には2種類ある

岩塩の製造方法は大きく二つにわかれ、「採掘岩塩」と「溶融岩塩」の2種類の岩塩があります。

採掘岩塩とは、山から採ってきた岩塩(写真)そのものです。洗浄し粉砕をして食用にします。

対して溶融岩塩は、地下にある巨大な岩塩層(ソルトドーム)を水に溶かして濃い塩水をつくりそれを煮詰めたものです。採掘岩塩よりも生産量が多く、安価なお塩となります。特にヨーロッパで広く流通している精製されたお塩です。

岩塩の中でも、「自然塩、天然塩」と呼ばれるものは採掘岩塩がこれにあてはまります。

 クリスタル岩塩
採掘岩塩(クリスタル岩塩)

溶融岩塩

溶融岩塩の製造イメージ(出展:Louisiana State Exhibit Museum (laexhibitmuseum.org)

 

岩塩はミネラル豊富なお塩ではない!!

よく誤解されているのは、「岩塩はミネラル豊富なお塩」であるという考え方です。まず溶融岩塩は精製されたお塩なのでミネラル豊富なお塩ではありませんが、採掘岩塩もミネラル豊富なお塩ではありません。

「ミネラル豊富」というキャッチフレーズは塩の販売自由化によって、広く知れ渡るようになりましたが、このミネラルとは塩化ナトリウム以外のミネラル(マグネシウム・カリウム・カルシウム等)をさしており、「ミネラル豊富なお塩」とは塩化ナトリウム以外のミネラルを多く含んだお塩で、それはつまり海の塩のことです。

「ミネラル豊富」という価値基準では、岩塩は到底、海塩には敵わないのです。

岩塩は気の遠くなるような形成過程によって塩化ナトリウム以外のミネラルが越し落とされたお塩なので、必然的に塩化ナトリウムの比率の高いお塩になります。また天然岩塩層から掘り出されるために層によって、ミネラルの含有率も一定ではなく、ミネラルバランスは微妙に変化します。

まとめると、岩塩の特徴は「ニガリ成分の少ない、塩化ナトリウム比率の高いお塩」になります。

ミネラル豊富なお塩とは・・

岩塩は「ミネラルが豊富ではない」という事を理由に、「岩塩は日本人の体質」にはあわないという論があります。

そこには「ミネラル豊富なお塩」のほうが、精製されたお塩よりも体には良いという考え方がベースにあります。高度成長期の昭和の時代、日本人が口にできた塩は「精製されたお塩・食卓塩」が一択でした。この精製されたお塩が、本来のお塩とは別物であるという「精製塩悪玉説」が食の意識の高い人達の常識となり、自然のものこそ体に良いという考え方から、「ミネラル豊富なお塩は良いお塩」という考え方が広まりました。

この説にあてはめると、塩化ナトリウム以外のミネラル含有率が少ない岩塩は体に悪い塩、という結論にいたるというわけですが、私はそのような単純なものではないと考えています。この「ミネラル豊富なお塩VS精製塩論」は、プロレスにおけるベビーフェイス(正義の味方)とヒール(悪者)に似た構造があって、非常にわかりやすいものですが、こういった論には落とし穴があるので注意が必要です。

「ミネラル豊富なお塩」というキャッチフレーズは科学的なものではなく、マーケティングのために作られたものです。

海水から塩を作っていた江戸時代においては、ニガリが多い塩(ミネラル豊富なお塩)は下等な塩とされていました。十分ににがりを切り、よい塩梅になったものが上等なお塩とされていたのです。

塩化ナトリウム以外の微量ミネラルが塩の味わいを変えることは確かですが、数値的なミネラル含有率だけで塩の良し悪しを議論するのはナンセンスであり、塩の個性を知る上での一つの参考値にすぎないと考えています。

海塩と岩塩のミネラル含有率
 代表的な海の塩と岩塩のミネラル比率

岩塩は日本人の体質にはあわないのか?

世界を見渡してみると岩塩が体に悪いという考え方は、奇妙で特殊な考え方のようです。

この論をどう思うかと、塩と水について研究をしているヨーロッパ在住の友人【「なぜ塩と水だけであらゆる病気が癒え若返るのか」著者:ユージェル・アイデミール氏】に聞いたところ、「偏狭で、国粋主義的な考え方だと思う。」という答えが返ってきました。私もそれに同意で、岩塩の特徴を知ったうえで正しい使い方をすれば、岩塩は決して、日本人の体質にあわないお塩ではありません。

ただ、岩塩への理解不足が、そのような偏見を生んでいるのだと感じています。

私は日本の食文化は素晴らしく、これを勉強し実践していきたいと思っていますが、国産以外の食材を排除するような考え方には賛同ができません。

岩塩は日本食にあわせてもなんの問題はないですし、その相性は良いものだと感じます。味噌や塩こうじ、梅干しも岩塩で美味しいものができるからです。岩塩が発酵食品にあわないという方もいらっしゃいますが、それはきっと良質な岩塩を使ったことがない方なのでしょう。

岩塩の質には気をつけるべき・・

岩塩を体に良くないと感じる人がいるのであれば、そこには理由があるはずで、まず、第一に考えられるのは「質の悪い岩塩」を食べた印象ではないかということです。

塩の自由化によって、岩塩が日本の市場に出回るようになり、もの珍しさもあって岩塩ブームが巻き起こりました。当時は今では考えられない高価格での販売がまかりとおっていたようです。しかし、このブームは長くは続きませんでした。その理由は質の悪い岩塩が市場に出回るようになったからです。

岩塩は天然の岩塩層から採掘されるもので、層によって純度の高い食用になるものから、塩とは言い難い不純物を含む「塩もどき」の層が存在します。

この「岩塩のクズ」のようなものを安価で仕入れ、売る業者がいたことで、日本における岩塩への評価が下がったのだと考えています。

岩塩は溶けづらいのか?

誤解のひとつに「岩塩は水に溶けづらい」というものがありますが、純度の高い岩塩はよく水に溶けます。

岩塩の粒の大きさは、粉砕の調整によって、大粒にしたり、パウダー状にしたりすることができますが、「大粒なお塩の事を岩塩だ」と勘違いする方もいて、大粒のお塩が溶けるには時間がかかりますので、これをもって「岩塩は溶けづらい」と思われている方が結構いらっしゃいます。

おすすめの岩塩は・・

岩塩の中でも良く知られているのがヒマラヤ産のピンク岩塩です。最もポピュラーで世界的にも人気の高いお塩です。採掘量も多く、手のとどきやすい価格で販売されているので、おすすめの岩塩ですが、ピンク岩塩はピンキリの見極めが難しいお塩なので注意が必要です。

ピンク岩塩には一定量の不純物(塩になりきらない未結晶のカルシウムの塊等)がどうしても含まれています。これは天然塩の宿命で、ある程度は仕方ないものなのですが、これが多すぎると「悪い塩」になります。ピンク岩塩を選ぶ際はまずは透明度を確認して、透明度の高いピンク岩塩を選ぶようにしてください。

源気商会で一押しにおすすめしているのは、ヒマラヤ岩塩の中でも最も採掘量が少なく、高純度のクリスタル岩塩です。クリスタル岩塩はガラス質で透明、不純物を含まず、水に溶けやすい岩塩です。岩塩に誤解がある方には、是非一度使っていただきたいお塩です。クリスタルではなく白いだけの岩塩(ホワイト岩塩)はクリスタル岩塩ほど水にはよく溶けません。

ユニークな存在がブラック岩塩です。岩塩の塊を焼成して砕いた「焼き塩」なので、天然塩に加工を加えたものなります。焼成による化学変化によって硫黄成分が高まり、還元力の強いお塩になっています。ただし、溶け残りも若干あるお塩なので日常使いよりも、アクセントとしてワンポイントで使うのがおすすめです。

岩塩の良さを知ったうえで使ってもらいたい・・

岩塩に含まれるミネラルは塩化ナトリウムが主体になりますが、微量でもマグネシウム、カリウム、カルシウムを含んでいます。そのミネラルの原料は古代の海水由来のものなので海洋汚染とは無縁、マイクロブラスチック混入の心配もありません。まさに地球が私たちに残してくれた「食べられる鉱物・ミネラル」です。

もうひとつ、岩塩にはまだ解明されていない「エネルギー」があることも、私が岩塩をお勧めする理由のひとつです。

岩塩に不思議なパワーがあることは確かです。そのひとつに「岩塩ルーム」の存在があります。

岩塩ルームとは、ヨーロッパや中央アジアではよく見られる民間の治療施設であり、岩塩に囲まれた室内に過ごすだけで、アレルギーや呼吸器疾患を改善させる効果があり、ロシアでは宇宙飛行士の疲労回復施設としても使われてきました。

ヒマラヤ産岩塩の生産地であるパキスタンでは、骨折や打撲した際に岩塩の塊を手のひらに握って(写真)、体にエネルギーを送り込む治療法があります。岩塩によって治癒力があがることを経験値として知っていて、それが伝承されています。

ヨーロッパで行われている「塩水療法・岩塩療法」においてもヒマラヤ産岩塩は特別なお塩と位置づけられており、健康のためにヒマラヤ産岩塩を使うことは一般的な知識として違和感なく受け入れられています。

 岩塩ルーム

岩塩ルーム(岩塩療法・ハロテラピーは古くからヨーロッパに伝わる民間療法)

ニガリが少ないからこその使い方

岩塩を否定し、ミネラル豊富なお塩を良し、とする人がいる一方で、ニガリ成分を摂りすぎるのは良くないと考える方々もいます。

これには一理があり、ニガリの摂りすぎは体にダメージ与えます。

ニガリは難病、重症患者を一時的に回復させる効果がある事例を私も知っていますが、それは逆に常用するには重たいものであるという事です。

ニガリを健康増進と結びつける場合は慎重にその量をコントロールする必要があると思います。

岩塩はニガリをほとんど含みませんが、その性質を利用し、マグネシウムを多く含んだナッツ類とうまく組み合わせていけば、植物性のマグネシウムミネラル補給を助ける良いお塩です。

塩は体にとって必要不可欠なものですが、塩だけにフォーカスしすぎると迷路へと迷い込んでしまうので、塩とあわせる食材との関係性、つまりは健康的で美味しいと感じる食事において、塩をどう活用していけば良いかを考えるべきです。

塩の特徴を知ったうえで食材とあわせていけば、どのようなお塩も「良い塩」にもなるし、その掛け合わせを間違えると「悪い塩」になるということです。

海塩も岩塩も、上手な塩使いになろう!!

健康論のうえで気をつけなくてはならないのは「これでなければならない!」という単一食品や商品への妄信であると考えます。健康論には必ず、両極端の説が存在し、一方の体に良いとされるものが、一方では悪だったりします。

なぜこのような事が起こるのか、それは、人はそれぞれに体質も性質も生き方も違うという事であり、人の体調も日々変化していくからです。

健康効果があるとされるものも度をこせば、それは害になるものですし、害となるものも少量であれば劇的改善のきっかけになったりします。

私は、一番大事なのはバランス、良い塩梅を日々、調整、チューニングすることだ!と考えていて、自分の体質にあった最大公約数的な良い食生活を基本としながらも、たまにはそれを逸脱する遊び心をもち、楽しく、自分の健康をDIYDo it yourself)していきたいと思っています。

その視点からすると、岩塩は日本人にあわないという論はちょっと真面目過ぎて、堅苦しく感じます。

 塩にも人と同じように、それぞれに長所も短所もあり、それを適塩適所(てきえんてきしょ)で生かしていくことが楽しい塩ライフへとつながっていきます

海塩も岩塩も、その良さを楽しみながら、お塩とお水で体にエネルギーを与えていきたいと思っています。

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2件のコメント

鈴木あこ様 コメントありがとうございます。今は世界中にマイクロプラスチックが舞っているような状況なので岩塩にマイクロプラスチックが付着する可能性がゼロではないと思いますが、パキスタン産岩塩の洗浄水は山の水を使っているのでその心配はしなくて良いと思います。

塩G

岩塩を洗浄する海水やらでマイクロプラスチックが入っている岩塩が多いと聞きます。
岩塩=マイクロプラスチックは皆無
とはならないと認識していました。

鈴木あこ

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